女優深浦加奈子さん 早過ぎるお別れ
故人には大変心苦しいが、訃報を聞いて初めてお名前を知った。
回りの人と彼女の話をした際、深浦さんの名前でなく、「あのドラマのあの役を演じた女優さん」と言うと、みんな分かった。
これって名脇役の勲章だと思う。
彼女を初めて見たのは、お受験を描いたドラマ『スウィートホーム』だった。
ちなみに、このドラマは僕にとって忘れられない作品。
話は中学校3年生の二学期の期末テスト直前まで遡る。
人生で初めて腹にくる風邪を引いてしまった。
1週間近く食事をほとんど摂ることが出来ず、体重は激減。
手を握り締めると、やせ細った拳に骨が不気味に浮かび上がっていたのを今でも覚えている。
学校は休んだものの、テストが近いこともあり、机に向かおうとするが、10分と我慢できない。
上からも下からも…。
とにかく横になっていないと気分が悪くなるので、TVを見ることしか出来なかった。
そんな中、『スウィートホーム』が再放送されていた。
中学校3年生の自分より遥かに幼い子供がお受験のために一生懸命頑張っていた。
幼い子供にお受験をさせることに賛否両論はあるが、無邪気に頑張っている子供の姿に純粋に感動した。
深浦さんは主人公一家のライバルであるメガネ一家の母親役を演じており、インパクトのある芝居に圧倒された。
深浦さんのユーモアあふれる演技に勇気を貰い、自分の中で何かが吹っ切れた。
期末テスト当日には何とか歩けるくらいに回復。
試験対策は全く出来なかったが、自分の力を信じて、何とかテストを切り抜けることが出来た。
深浦さん。
もしかしたら、長い年月の後にあなたの名前を忘れてしまうかも知れない。
でも、あのドラマの中でのあなたの強烈なインパクトのある演技は一生忘れません。
ご冥福を心からお祈りしております。